「障害が価値に変わる社会」を創りたい吃音VR起業家の活動日記

日本に120万人、世界に7600万人いる原因不明の言語障害である吃音症を改善する世界初のVRプロダクトの開発と研究をしているMarkです。このブログでは、VRの進捗報告と、当事者の経験と研究から吃音の改善、悩みの軽減のヒントになるような情報を発信していきます。VRの研究開発を3年ほど行う中で吃音や心理学、VRの様々な研究論文や学術誌を読み漁り、吃音の支援団体でも活動を行い、実際に100名以上の吃音者とお会いしてきたので、その経験と研究ベースの情報を元に吃音の改善、悩みの軽減に役立つ情報を発信していきます。

ただ話す練習をするだけでは不十分な人も!吃音VRで吃音を改善するコツとは

どうも、Markです。

 

久々のブログ更新になりますが、今回は話す練習をただ繰り返すだけでは改善が難しいのではというテーマでお話しできればと思います。

 

 

 

場数をこなせば、慣れて、普通に話せるようになると考えている方が多いと思いますが、VRを累計150人の吃音の方に使ってもらう中で、実は場数をこなす人でも、吃音が改善できた人、あまり効果が出なかった人にはある違いがあることに気づきました。

 

 

それは、ただ話す練習を繰り返したのか、それとも別の要素も理解して、話す練習を繰り返したのかということです。

 

 

 

私自身、VRで話す練習ができる環境を提供していますが、人によっては、ただ話す練習だけだと改善しにくいなと思ってます。

 

 

 

大事なのは、ただ繰り返して、吃らないようにしようとするのではなく、不安症状にアプローチすること。これが繰り返し話す練習を行い、場数をこなした人で効果が出た人、出なかった人の違いとしてあるのではと考えております。

 

 

 

少しでも吃ったら失敗、全く吃らずに言えたら成功という風に成功体験の基準がどもるか、どもらないか、これしかない無い場合、なかなか、話す練習だけでは改善しにくいと感じてます。

 

 

 

吃音症状はすぐに言語症状が減るものではないので、1日、1週間、1ヶ月など繰り返して、短期間で言語症状が減ったかどうかだけを指標している場合、すぐに大きな変化は出ないので、挫折しやすいです。

 

 

 

なので、吃音の言語症状だけにフォーカスしていると、なかなか改善しにくく、言語症状以外での吃音の改善に繋がる要素、成功体験の積み方を学ぶことが大事だと考えてます。

 

 

 

そのためには、自分が人前で話す時に不安や緊張を感じる条件や状況を客観的に理解できるようにすることが大事だなと思ってます。

 

 

 

自分の吃音や不安を客観的に見れるようになることで、不安の要因を特定し、そこからその不安を減らすための対策ができるので、

 

 

 

ベストはただ、話す練習をするよりも、吃音の増悪因子や社交不安障害の仕組みについて理解して、勉強をしてから、話す練習をするのがベストだと感じてます。

 

 

 

実際、VRを使って吃音の改善実感、悩みが減ったという方はただVRで話す練習をするだけではなく、

 

 

 

話す場面に直面した瞬間に自動的に生まれるネガティブな感情や気持ちを記録するワークなども並行して行ったり、

(これは社交不安障害に効果的と言われる、認知行動療法という心理療法のワークの1つになります)

 

 

 

最初に吃ったら失敗、吃らなかったら成功と0か100かという思考で場数をこなすのではなく、小さな成功、小さな変化に目を向けることの重要性や吃音に併発する社交不安を改善するための技術などを学びながら、VRでの話す練習を取り組んで、効果が出てきた方が多いです。

 

 

 

なので、吃ったら失敗、全く吃らなかったら成功というどもるかどもらないかという2つの基準しか、成功体験の積み方を知らないという方は、

 

 

 

社交不安障害に関しての理解、その不安障害に効果的な心理トレーニングなど、言語的なアプローチだけではなく、発話の前の不安を減らすアプローチについて勉強してみることをおすすめします。

 

 

 

・そういった勉強の仕方が分からない!

・何から勉強したらいいのか分からない!

・ネットで不安症状へのアプローチ、改善法を調べてみたけど、イマイチ理解できない!

・不安を減らす具体的な方法が知りたい!

という方は、こういった吃音における不安へのアプローチについて学べる勉強会として、どもラボ勉強会というのもやっておりますので、

 

ご興味ある方は、こちらのURLから「その他」を選択頂き、「どもラボ勉強会に参加したいです」という内容でお気軽にお問い合わせ下さい。

 

https://domolens.jp/contact

 

 

※勉強会の資料に関しては臨床心理士や吃音の臨床経験のある言語聴覚士にも内容を確認してもらい、5冊の専門誌、10本の論文をベースに資料を作成しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルバータ大学の吃音研究所ISTARで吃音臨床にVRを取り入れた研究が開始されました

 

 

どうも、Markです。

今回、ご紹介したいのがカナダのアルバータ大学の吃音研究所ISTARで社交不安を持つ人に対してVRによる社交不安の軽減により、吃音者のQOLを高める研究についてです。

 

 

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2019年の12月から開始された研究で、少し古いですが、海外のHealthcareに特化したニュースで放送されるなど話題になっておりました。

 

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動画は以下のURLから観ることができます。

https://globalnews.ca/video/6275806/u-of-a-team-studying-high-tech-treatment-for-stuttering

 

 

アルバータ大学の吃音のある方へのVRの介入研究の概要

 

今回の研究では、吃音と社交不安がある人にVRを使ったスピーチトレーニングを提供するというものになります。

 

特に社交不安を併発する吃音者は対人場面での不安と緊張、吃ることでバカにされる、変に思われるなどの不安から、対人場面で発話することをつい避けてしまい、実際の対人場面でのトレーニングがうまく行えていないという現状があります。

(この恐怖や不安を感じる場面で発話し、その場面に慣れること、自分の不安や恐怖が実際よりも小さいものだったと、実際に体験することで感じるようなトレーニングを心理療法では暴露療法と呼びます。これは社交不安の改善に使われる手法の一つとなっています)

 

cocoromi-cl.jp

 

そこで、今回の研究では、社交不安を併発する吃音者でも対人場面で発話のトレーニングができるように、個人個人にカスタマイズした環境を作り、普段の吃音の臨床のプロセスの一つにVRによるスピーチ練習を取り入れて、実際にどんなメリットが見られるのかを研究するというものです。

 

カスタマイズできる内容としては、周りの音の大きさ、騒音を出す。またはアバターで人の人数を1人、2人、3人など徐々に増やしていき、緊張や不安、吃ることへの不安度合いが増すようなトレーニングをVRで行うというものです。

 

以下に実際の研究の詳細をまとめましたので、興味がある方はご覧ください。

 

 

アルバータ大学の吃音のある方へのVRの介入研究の詳細

New UAlberta virtual reality program tackling social anxiety among stutterers | Institute for Stuttering Treatment and Research

 

 

吃音者は、話す状況に関して多くの不安に直面する可能性があることは、音声言語病理学コミュニティでよく知られています。

 

しかし、アルバータ大学吃音治療と研究のための研究所(ISTAR)は、仮想現実から少し助けを借りてそれを変更しようとしています。

 

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「現在、私たちはVRテクノロジーを使用して、クライアントが最終スピーチの練習を行えるようにしています。これは、集中的な吃音クリニックの参加者が治療の最後に受けるトレーニングです」

と、吃音の研究委員長であるISTARおよび准教授のTorreyLoucksは説明します。

 

「クライアントは、実際の人前で話す状況を模倣した仮想世界でスピーチを行います。ステージ、部屋の前、会議室のテーブルで。私たちが望んでいるのは、吃音のある人が練習できるように、やりがいのあるコミュニケーション状況を提供することです。彼らが治療に使用するスキルと、社会的状況に陥る不安を軽減します。

 

近年、吃音者が直面するコミュニケーション不安は、社交不安障害と定義されるものと非常に類似していることが研究によって示されています。

 

実際、吃音のある人のほぼ50%にとって、人前で話すことや社会的状況に対する恐怖は、社交不安障害のスクリーニングテストに合格するほど深刻です。

 

しかし、吃音のある人は社交不安障害の特徴のすべてを経験するわけではないかもしれませんが、彼らはしばしば診断機能のいくつかを共有しています。

 

「私たちは大部分が流暢な人々を持つことができます-彼らは治療で優れた利益を上げました、彼らはそれらの利益を維持します-しかし公共の場でコミュニケーションすることは彼らに途方もない不安を与えることができます

とLucksは言います。

 

「しかし、社会不安は吃音の二次的なものであることは間違いありません。吃音がなければ、人前で話すことや社会的状況にあることを恐れることはないでしょう。」

 

吃音とともに社交不安障害の特徴を示す人は、社会的相互作用の間に快適になることになると、より詳細な治療が必要になる場合があります。

 

これがバーチャルリアリティの出番です。

 

「これらの種類のバーチャルリアリティツールは、スピーチ、社交、または単に人と一緒にいることなど、人々が何らかのコミュニケーション演習を行うことができる社会的状況を提供します」

 

Lucks氏は言います。

 

 

 

個人ごとにカスタマイズされたエクスペリエンスをVRで実現する

 

「ISTARで現在利用可能なバーチャルリアリティテクノロジーとプログラミングにより、セラピストはクライアントのニーズに合った環境を選択できます。

 

たとえば、クライアントが始めたばかりの場合は、アバターがいない仮想部屋に配置して、クライアントがいるようにすることができます。

 

その後、治療が進むにつれてアバターの数を調整できます。アバターのグループの受容性を調整して、話したり、ささやいたり、動きなどの気晴らしに直面したときに、スタッターがどのように反応するかを確認することもできます。」

 

 

本質的に、セラピストは仮想現実のための暴露療法を作成することができます。そこでは、時間が経つにつれて環境がより困難になり、人々は不安を誘発する状況にさらされます。

 

 

「環境ノイズを追加したり、照明を変更したり、スピーカー(クライアント)の位置を移動したり、設定をカジュアルまたはフォーマルにすることができます。」

 

 

バーチャルリアリティプロジェクトへの参加に同意したISTARで治療を受けるすべてのクライアントは、質問票に記入するよう求められます。これにより、Loucksは練習前と練習後の不安の割合を監視できます。

 

 

「私たちはすでに利用可能な研究を利用して、吃音のある人にそれを適用したいと思っています」

とLucksは説明しました。

 

「吃音者と一緒にバーチャルリアリティを使って行われた研究はすでに少しありますが、バーチャルリアリティ環境は日常の現実環境で話すのと同じ種類の流暢さを引き出すことがわかりました。したがって、このテクノロジーを使用すると、クライアントは依然として通常と同じ種類のスピーチの課題に直面しています。

 

これにより、バーチャルリアリティがISTARクライアントに有用なスピーチの機会を提供することを期待できます。私たちはこれの利点を引き続き検討したいと考えています。」

 

VRは実際のシナリオに取って代わるものではありません


仮想世界は実際の環境に取って代わって実行することはありませんが、拡張現実により、セラピストとそのクライアントはこれらの現実のシナリオをより戦略的に使用し、体験をより価値のあるものにすることができます。

 

「集中診療所を運営する場合、ボランティアが参加してクライアントが毎回スピーチを行う必要がある3つのセッションを行う代わりに、VRで練習し、ボランティアの前で1つのスピーチを完了して、そのスピーチをより価値のあるものにすることができます

VRの下でより激しく、より頻繁に練習して、1つの公開スピーチを実際に最大限に活用することができます。

 

研究はまだ進行中ですが、Lucksは、バーチャルリアリティ吃音プログラムがセラピストとそのクライアントに大きな利益をもたらすことを非常に期待しています。

 

文献によると、バーチャルリアリティ環境を通じて提供されるバーチャルリアリティ曝露療法または認知行動療法は、社交不安障害の人々に利益をもたらす可能性があります。人前で話すことへの恐怖とパフォーマンス不安は、社交不安障害のサブタイプです。またはこれらのサブタイプの両方。」


「私たちが望んでいるのは、吃音のある人が治療で使用するスキルを練習し、社会的状況に陥る不安を軽減できるように、やりがいのあるコミュニケーション状況を提供することです。」

 

 

 

◯今回の研究の意味、重要性に関して

この研究で自分が重要だと考えるポイントは、実カナダの吃音の研究所で吃音の臨床に関わる言語聴覚士の先生が実際に行う、吃音の臨床のプロセスの一つにVRを組み込んだというのが大きなポイントになります。

 

これまで行われた研究では、2015年のアメリカの研究では、VRと実際の場面の緊張や不安度合いがどれぐらい変わるのかに関しての研究であり、2016年のイギリスの研究では、大学院生がVRを吃音がある方に使い、社交不安の軽減、吃音の主観的な軽減が見られたなど、実際の臨床のプロセスでVRを使うという研究はまだされておりませんでした。

 

アメリカの大学でVRが吃音臨床に活用できることが明らかに - 「障害が価値に変わる社会」を創りたい吃音VR起業家の活動日記

 

なので、今回の研究で吃音の臨床のプロセスの中でどういう手順でVRを使うことで、臨床の現場に関わる先生方の負担も軽減でき、吃音で困っている人の課題、悩み、困り感を軽減し、吃音の改善につながるのか、そこが見えてくるという意味でかなり重要な意味を持つと考えています。

 

実際、自分が今、研究開発しているVRであるDomoLensに関しても吃音の臨床現場で働く先生に高評価で、ニーズがある(以下の画像参照)ということは実際に何人かの言語聴覚士の先生にヒアリングした中で分かってきてはいるのですが、それをどう普段の臨床のプロセスに組み込むのか、どういう手順で、どういう風にVRを提供すれば良いのかがわからない、そこがネックだと言われましたので、この研究でどういうやり方が良いのか見えてくることに期待しております。

 

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ちなみに、その課題を解決するためにこれから別の疾患に対してVRを使った治療プログラムを取り入れている精神科のクリニックの先生ともお話をし、うまくいけば、そこでVRを使ってもらい、そのやり方を吃音に応用しようと考えておりますので、その内容も進捗がありましたら、ご報告いたします。

 

今回のような吃音におけるVRの可能性や吃音に興味がある人、またはメンタルヘルス、ヘルスケア領域におけるVRの活用可能性に関してご興味がありましたら、以下のような内容など詳しくお話しできますのでDMでご連絡ください!

 

以下のVRメンタルヘルス講座では、300ページぐらいの国内外のヘルスケア領域におけるVRの研究、製品の活用事例などをまとめた資料を使い、就労移行支援事業所で講演させていただきましたので、そういったお話も可能です。

 

vrforstutter.hatenablog.com

 

 

また、DomoLensを一度、試してみたい、レンタルしてみたいという方がいましたら、こちらのHPからお気軽にお問い合わせください!

 

domolens.jp

 

 

 

 

 

【VR体験会の開催レポート】難発がメインの社会福祉士の方にご参加いただきました!

どうも、Markです。

7/11に1名限定でVR体験会を開催しました!

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男性の吃音の方で、社会福祉士のお仕事をされていて、電話で話す場面で特に吃音で悩まれている方がご参加下さいました。

 

基本的に難発の症状がメインの方で、国立障害者リハビリテーションセンターに通院されており、現在は、認知行動療法ベースの治療をメインに受けているとのことです。

 

 

VRを体験して頂いた感想

 


・面接

Normal

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「自分が就活生の頃を思い出した。

VRとわかっていても緊張する。面接官が眉間にしわを寄せる時、緊張する

 


・自己紹介

Hard

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「自分が最後に自己紹介で、明るい雰囲気なので、最後自分が言ってしらけたらどうしようと不安になる。。。


「みんなうまく話しつつも、笑いもとっているのですごいな」

 

「最後ですね、お願いしますと言われるのが構えてしまう」


こういうのがあれば、

レーニングが家でもできそう。

 

「新生活とか入る人はやったほうがいい」

 

「当事者ならではの苦手ポイントをついている」

 

・プレゼン練習
Hard

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「プレッシャー、みんな聞いていない、こんな中で話すのか。誰も自分の話を聞いていない、見ていない、スマホを見ている」

 

目の前でパソコンを閉じられるとかもすごくしんどかった

 

「当事者ならではの視点で、吃音者が本当に苦手なシチュエーションが分析されている」

 


・電話練習

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「電話のVR。全てが嫌なシチュエーション」

「狙ったかのように、自分のところにしか電話がない


VRでも電話が鳴って取るまでの間に、ちゃんとどもらずに言えるかなとどうしても考えてしまう」

 

「それが映像でも感じた」


「その葛藤の部分が実際の場面と重なる」

 

「どもらないか、どもったら他の人、どう思うんだろう。横に人がいるとしんどい。変な汗をかく

 

 

 

○自分が思うVRの価値、可能性について。


今日の体験会では、VRで実際の場面と同じ不安や緊張が生まれることや実際の不安を感じた際の吃音の症状なども出るということがジョージワシントン大学のShelley Brundage教授が行った海外の研究で言われておりましたが、

 

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Real Enough: Using Virtual Public Speaking Environments to Evoke Feelings and Behaviors Targeted in Stuttering Assessment and Treatment | American Journal of Speech-Language Pathology

Shelley B. Brundage | Department of Speech, Language & Hearing Sciences | The George Washington University

 

 

 

やはり、今回、実際に体験してもらい、VRと分かっていても実際と同じようなどもって変に思われたらどうしようという不安などが生まれ、汗をかいたといった声などからも

 

 


VRとわかっていても失敗できない、どもる不安を感じることが分かりました。

 

 

 

でも、そこまでリアルと近いけど、自分一人でできるので、どんなにどもっても、失敗してもいい。

 

 

 

どもる声やどもっている様子を誰にも見られずに、苦手な場面での発話に挑戦できるというのがVRの価値なのではと改めて思いました。

 

 


現在、VR体験会の他にも吃音の改善、悩みの軽減に役立つ勉強会を少人数で開催していますが、

 

 

 

やはり、心理療法などを実践する以前に

 

「苦手な場面での発話をどうしても回避してしまう」

「どもるとパニックや焦りがすごくて、そもそもそういうことをやる余裕がない」

 

 

 

そういう声を頂きました。

 

 

 
確かに、どもるとパニックに近い状態になりますし、焦って、さらにどもりが増して、しんどくなるというのは自分も経験があるので、痛いほど分かります。

 

 


そもそも、僕たちにとって対人場面や発話する場面の多くが失敗できない、本番なんですよね。

 

 

 

普通に話すことができている人間を演じているだけで、言い換えしたり、言葉が出る時に話したり、自分は苦手な対人場面で話す際は、綱渡りをしているかのような状況でした。

 

 

 

なので、吃音がある人の前ですら、こう思われたどうしようという不安は少なからずあるなと思っています。

 

 


だからこそ、苦手な場面で発話する、回避を減らすための最初の一歩としてVRという選択肢があると、もっと手軽に、苦手な場面に挑戦する練習ができるのではないかと思いました。

 

 


なので、これからより、VRの可能性を一人でも多くの人に知ってもらうために、VRを当事者団体とも連携して、VRの貸し出しを行える体制を作りたいと思っています。現在、2団体ほど、ご協力いただけそうです。

 

 


そのために必要な機材を集めるためにクラウドファンディングにもこれから挑戦します!!

 

 

 

誰もが自分の障害で本当にやりたいことや夢を諦めなくていい、そんな社会を実現するために、挑戦したい人、夢を諦めたくない人。

 

 

 

そんな人のための挑戦できる場所、新しい選択肢としてVRを広く多くの人が使えるような体制を作れるように、頑張っていきたいと思います!

 

 


今回のようなVR体験会も随時開催しておりますので、ご興味を持っていただいた方は以下のURLから、お気軽にお問い合わせください!

 

domolens.jp


また、SNSに直接、DMを頂く形でも大丈夫です。

 

 

 

オンラインでまずは雰囲気だけでも体験してみたいという方は、オンラインでのVR体験会も開催しておりますので、そちらをご希望の方もお気軽にご連絡下さい!

 

 


これからは、今までVRを体験してくれた方の感想なども随時、ブログにアップしますので、よろしくお願いします!

 

 

 

 

鳥取大学の研究から学ぶ!認知行動療法で吃音の悩みを減らすために役立つ2つの考え方とは

 

どうも、Markです。

 

吃音のどもりを減らす、言葉が詰まるのを減らしたい!

 


それは多くの吃音者の共通の悩み、願いだと思いますし、自分もずっとそれで悩み続けていました。

 


そのために発声法や呼吸法など色んな方法を試してみました。効果ある人は一定数いますし、そういう研究もあり、実際に改善した人もいるので、否定はしないですが、吃音には色んなタイプの方がいます。

 


自分はあまり、発声法や呼吸法だけで効果を感じるタイプではなかったので、別のアプローチも試してみました。

 


その方法の1つが認知行動療法という方法です。この方法で自分は吃音の悩みを減らすことができました。

 


今回は、そんな自分と同じような吃音のタイプの人で、呼吸法や発声法を試してみたけど、あまり効果を感じられない。心理的なアプローチや認知行動療法に興味があるけど、何をしたらいいのか分からない。

 


そんな人が認知行動療法とはこういうもので、こうすれば、日々の吃音の悩みを減らすことに役に立つのか!

 


そんなことが知れるような情報を研究ベースでご紹介できればと考えております。

 


今回、ご紹介させていただく内容は2015年に鳥取大学の竹田伸也准教授が行った、吃音の青年の就活生1名に対しての認知行動療法の実践に関しての研究です。

 

ci.nii.ac.jp


この研究では、認知行動療法を使った治療を吃音者の方に行ったことで、吃音の悩みが減り、就活で内定を獲得することができたそうです。

 


ただ、人数が少なく、研究としてはエビデンスレベルはそこまで高くはないので、これをすれば全てのタイプの吃音の改善に繋がるというものではありません。

 


ですか、吃音改善、吃音の悩みを減らすための新しい選択肢として、参考になるんじゃないかなと自分の経験からも感じたので、ご紹介させていただければと思います。

 


今回はその中でも特に吃音の悩みの軽減に役に立ちそうな2つの考え方をご紹介させていただければと思います。

 

 

1.認知行動療法とは
2.吃音の悩みを減らすのに役立つ認知行動療法ベースの2つの考え方
3.まとめ


1.認知行動療法とは

そもそも、認知行動療法とは何かということですが、認知行動療法の第一人者である大野先生によると


「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、認知に働きかけて、こころのストレスを軽くしていく治療法を「認知療法認知行動療法」といいます。


認知には、何かの出来事があったときに瞬間的にうかぶ考えやイメージがあり「自動思考」と呼ばれています。


「自動思考」が生まれるとそれによって、いろいろ気持ちが動いたり行動が起こります。

ストレスに対して強いこころを育てるためには「自動思考」に気づいて、それに働きかけることが役立ちます。

 

mh.cbtjp.net

 

というのが認知行動療法なのですが、

語弊を恐れずにすごく簡単にまとめると、


自分の考えや思考を疑ってみる。

そのための思考のツールです。

 


多くの人は無意識に、一定の場面、一定の条件で同じような反応や行動をします。

 


寝る前に歯磨きをするというは無意識でできる人がほとんどだと思いますが、それぐらい無意識に行われている行動が人はたくさんあります。

 


南カリフォルニア大学のウェンディーウッド教授の研究によると、人の1日の行動のうち3/1〜2/1は習慣的な行動で占められているそうです。

 

gretchenrubin.com


つまり、人間の行動のうち40%以上が習慣で作られているというぐらい、自分で気づかないほど、習慣が人間にはあります。

 


その中でも、悪い習慣、嫌な感情や嫌な気分になる、自己嫌悪に陥るものもあります。

 


その無意識に起こる習慣を、意識的に何がきっかけで起こっているのか、というのを1つずつ分解していき、これが原因だからここを変えよう。


それを具体的に行うためのツールとして、認知行動療法が使われます。

 

 


2.吃音の悩みを減らすのに役立つ2つの考え方


では、どうやって吃音の悩みを減らすためにこの認知行動療法を活用すればいいのか?


2015年に鳥取大学の竹田伸也准教授が行った、吃音の青年の就活生1名に対しての認知行動療法の実践に関しての研究報告の具体例から今すぐ使える吃音の悩みを減らす認知行動療法の使い方についてみていきましょう。


まずは結論として、今回の研究から吃音の悩みを減らすために役に立つ考え方は以下の2つです。 

 

①吃音症状は完全にコントロールできないので、思考や考え方をコントロールしてみようと考える。


②どもったら馬鹿にされた、蔑まれたという事実、証拠を探してみる。

 


では、1つずつご紹介していきます。

 

①吃音症状は完全にコントロールできないので、思考や考え方をコントロールしてみようと考える。

 

どもったり、言葉が詰まる症状を減らそう、無くそうと吃音の言語症状だけにアプローチしても、それだけでは改善が難しいということがいくつかの研究や本で言われており、

 

実際、国立障害者リハビリテーションセンターの院長である森浩一先生が統括されている研究プロジェクトでも、以下のように、成人の吃音者に関して、吃音の症状だけへのアプローチは効果が出にくく、心理的なアプローチも吃音改善には必要だと言われております。

 

言語訓練としては吃音緩和法と流暢性形成法との組み合わせ(統合法)がよく使われるが,これらのみで改善する症例は少なく,過半数では社交不安障害などの心理面の評価と対応も必要になる。社交不安障害には薬物療法も行われるが,認知行動療法が奏功する。

kitsuon-kenkyu.umin.jp

 

実際、今回の認知行動療法の研究の対象となった吃音の就活生(Aさん)、吃音を治そうと意識すればするほど、吃音が悪化するという現象が見られたそうです。

 

まず、Aさんはどんな症状、特性があったかというと、発音する際に最初の第一声が出にくくなる、難発でした。誰の前でもどもりますが、親しい友人や恋人の前であれば、あまりどもらなかったそうです。

 

どもりそうになると、他の言葉に言い換えたり、言おうとしたことを忘れたふりをするなど、とにかく、吃音が目立たないようにしていたそうです。

 

特に苦手な場面は、実習中の患者の名前を呼ぶ場面と就職活動。他の場面なら避けることはできますが、患者の名前は避けられないし、他のものと違い、自分のやりたいことであり、避けたくないのに避けてしまうのがしんどい。

 

実際、Aさんは実習中に患者の名前を呼ぶ必要がある場面になると、周りから変なやつ、気持ち悪い、そのくらいのこともできないのかと思われると思っていたそうです。

 

そこで、Aさんは自分なりに吃音を改善するために、

・話そうとする際に第一声を伸ばして発音する

・滑らかに話せている自分をイメージする

などを行いました。

 

ですが、そういう努力を行うことで、吃らずに喋ろうとAさんが意識すればするほど、「自分の話し方は周りからどう見られているのだろう」と考えてしまい、自分の話し方に注目しやすくなり、その結果、対人場面での不安と緊張が増して、話そうとする際に吃音症状が出やすくなっていたそうです。

 

そこで、Aさんのニーズである「就職活動をして、医療機関に就職すること。そのためには、就職への不安を軽くしたい」

 

このニーズを叶えるために、就職への不安を維持する原因となっている考え方と行動の2つを変えるために、

 

1.不安を高める考え方を変えること

2.回避してしまう対人場面での発話を避けない

 

この2つの方法を行いました。

 

そのために、吃音症状自体はコントロールは難しいですが、その周辺の回避行動や認知をコントロールすることは可能であり、それによって不安を軽くし、吃音に縛られずに自分がしたいことをするようにしました。

 

ここで、対人場面の回避を減らすために、「人前でどもりたくない」というAさんの考えを尊重して、言葉の言い換えはしても良いとしました。言葉の言い換えは、対人場面で発話しようという努力と言えるので、Aさんの吃音に囚われずに、やりたいことをするというのに近づくので、言い換えはしてもいいとしました。

 

このように、話し方をコントロールするのではなく、その苦手な場面でどう思考して、どう行動するのか、そこを変えようと意識しました。

そのために、まずは苦手な場面を回避しない。

 

それが、自分の話し方に意識が行き過ぎてしまい、周りから自分の話し方をどう思われるのかを考えすぎ、対人場面での不安と緊張が増して、吃音症状が出て、しんどいという悪循環から抜け出すきっかけになりました。

 

 

②どもったら馬鹿にされた、蔑まれたという事実、証拠を探してみる。

 

ですが、苦手な場面を回避しないだけではこれまでと同じように、話し方に意識が向く可能性があります。

 

そこで、この研究では、自分の吃音に対するマイナスな考えや思考に根拠はあるのか?を考えるということをしました。

 

具体的には、Aさんは患者を呼ぶ場面で、「周りから、変なやつ、気持ち悪い、そのくらいのこともできないのか」と思われると考えていました。

また、そのように、患者の名前を呼ぶことの回避を重ねることで、「自分には医療への就職は無理だ」と考えてしまい、就職活動をずっと避けていました。

 

そこでこの研究では、他の人からの否定的な吃音に対する評価が本当なのか?根拠があるのかどうかを確かめるために、実際に人前で発言した後に、相手の様子を注意深く観察することをしました。

 

社会的な場面でどもってみて、吃音のことを直接気持ち悪がっていたり、蔑んだ言葉が見られるがどうか、話が終わっていないのに相手がその場から離れるなど、

 

ネガティブな評価と思われる態度をAさんとともに治療者の方が挙げて、それが実際に見られるかどうかを日常生活での課題としました。

 

これをより本格的にやる方法として、思考記録表というのがあり、今回の研究ではAさんが吃音に対して他人からネガティブな評価を感じたと思ったら、その都度、この思考記録表に記入して、自分のマイナスな感情に根拠はあるのかどうかを確認しました。

 

思考記録表とは、自分の中でマイナスな感情になった場面で、その考えは事実なのか、それとも思い込みなのかどうかを確認するためのツールです。以下の6つの内容に沿って、自分の考えを分解します。

 

詳しい内容は今回、省略しますが、興味がある人は以下のURLから確認してみてください!

 

1.いつ、どこで起きたのか?

2.どんな出来事、どんな状況だったのか?

3.その状況や出来事から、どんな思考が湧いたのか?

4.その思考が湧いた時、どんな感情になったのか?

5.その思考とは、別の考え方をするとしたら?

6. その別の思考で考えられたら、どんな感情になるのか?

うつや不安をやわらげる「かんたんコラム法」 | このサイトでできること | こころのスキルアップ・トレーニング

 

このように、不安が高まる考え方を変えること、回避してしまう対人場面を避けないということを、認知行動療法を用いて、実践することで、Aさんは医療機関から内定を獲得することができました。

 

他にも、回避していた場面でも発話に挑戦し、友達への吃音のカミングアウトや実習中に患者の名前を呼ぶなどを行い、「言う前に躊躇はあったが、回避はますます苦手な意識を強め、自分がしたいことを遠ざけると思うと、それが後押しになって言えた

 

実践してみた結果「どもることは別に恥ずかしいことではないと思う」と友達はAさんに伝え、患者も特にAさんが気になるような態度を示していなかったそうです。

 

また、吃音に対するネガティヴな評価については、「そう思う根拠が案外ないことに気づいた。反面、そのような考えと矛盾することが多いのも分かった。吃音があってもなくても、自分がしたいことをするのが大事だと合点がいった」

 

こうした、研究で治療を受け続けた結果、Aさんは「吃音が治って不安なく働くのと、吃音があっても恥ずかしいことではなく、どもりながら働くのは一緒だと思った」と話して、日常生活の中で吃音について考える時間が減ったと話した。

 

さらに就労してから1ヶ月後、Aさんに話を聞くと、「どもりはそんなに恥ずかしいことではない。治らんでもいいと思えた。どもりはそれ自体よりもそれをどう捉えるのかという自分の中の問題なんだと気づいた」と話したそうです。

 

 

3.まとめ

 

今回の研究をまとめると、吃音の症状、どもる話し方を完全にコントロールするのは難しいが、その苦手な場面での吃音に対する自分の思考や行動はコントロールできる。

 

苦手な場面を回避することで、吃音が悪化する悪循環に陥るため、苦手な場面を回避しないように、言い換えを駆使する。

 

そうして、苦手な場面を避けず、発話を行う中で、自分の吃音に対するネガティブな思考や考え方が本当なのか?それに証拠はあるのか?というのを、吃音で嫌な気持ちやマイナスな感情になったら、確認する。

 

この研究自体は2015年なので少し古いですが、具体例が豊富だったので、参考になると思いました。

 

全部試してみるのは大変だと思いますので、今回、ご紹介した中でも、自分の吃音に対するマイナスな感情や思考は本物か?それに証拠はあるのか?ということを考えるだけでも、是非試してみてください!

 

より実践的にやりたい方は、思考記録表をネットでダウンロードしてやってみるのもオススメです。

 

より認知行動療法を学んでみたいという方は漫画や吃音に特化した認知行動療法の本もありますので、読んでみて下さい。この漫画に詳しく、思考記録表を実践する方法も書いてあります。

 

今後も吃音の悩みを減らすのに役に立ちそうな研究などをご紹介できればと思っております。

 

次回は、これまで50人以上インタビューした中での当事者の成功体験や改善のきっかけを研究と紐付けて、具体例から研究の実践について考えてみたり、認知行動療法やACT、セルフコンパッションなどの心理的なアプローチの研究から吃音の悩みを減らすのに役に立ちそうな情報などをご紹介します!

 

一人ひとり、効果のあるものは違うので、色んな選択肢、吃音の悩みを減らすヒントを研究ベースで発信していき、研究がよく分からない人でも分かりやすく、すぐに使えるような形で発信していければと思っております!

 

 

 

 

 

 

 

優秀賞を受賞した吃音特集のラジオ番組「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」

 

どうも、Markです。

 

吃音がある人がこのブログを読んでいると思うのですが、子供の頃、吃音で辛い思いをしたって人は多いのではないのでしょうか。

 

自分も小学生の頃から一気にしんどくなりました。だから、治したい、そう思う人は多いと思います。なので、自分もVRの研究をしています。

 

そういった吃音改善も大事ですが、今回、ご紹介したいのは吃音啓発に関するラジオです。

 

自分自身、吃音改善の研究をしているので、啓発の活動はあまりできていませんでした。

 

しかし、今回のラジオの内容を知ってからは吃音啓発の可能性や重要性というのをこれまで以上に感じることができました。

 

もしかしたら、正しい吃音の理解を促すことは吃音改善にも繋がるのではないか、そう思いました。

 

そこで、今回は優秀賞を受賞した吃音の正しい理解に関するラジオ番組「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」についてご紹介させていただければと思います。

 

 


1.吃音特集で優秀賞を取ったラジオの概要
2.間違いだらけの吃音理解
①吃音は放っておけば治る
②吃音はどもりがひどい人が一番悪化している
③吃音の話をして、吃音を意識させると悪化する
3.吃音の正しい理解の啓発が一人の吃音の子供を救った話
4.考察

 

今回ご紹介させていただくラジオはSBCラジオスペシャル「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」という長野のラジオ番組が2019年日本民間放送連盟ラジオ教養番組部門で優秀賞を受賞したものになります。

 

長野県で言語聴覚士をされている餅田亜希子先生が世間で言われている吃音についての知識や理解に関して間違いが多いので、その間違いを修正し、本当に正しい知識を紹介していく番組です。

 

 

 

1.間違いだらけの吃音理解

 

間違いだらけの吃音理解①

「吃音は放っておけば治る」

 

ラジオでは、発達障害の専門である医師に吃音について相談したところ、8割が成人までに改善することから、様子見と言われたそうです。

 

しかし、吃音は放置しているとどんどん悪化していくことがあります。


「あ、あ、あ」と連発で話すことが一番楽な発話なのに、それを否定されることで吃音の症状はどんどん悪化してしまうんです。


それはクラスで子供たちに真似されたり、親切にそういう言い方じゃないよとクラスメイトに指摘されたり、いじめで悪化すると思いがちですが、必ずしも悪意ではなく、話すのが大変そう、苦しそうだから何か力になりたいという善意から指摘されることもあります。

 

それでも、自分の意志でコントロールはできないので、「か、か、からす」と言って、そうじゃないよ、「からす」だよと指摘されます。

 

自分の話し方は変なんじゃないか、おかしいんじゃないか、そんな不安から、どもらないように色々工夫をし始めます。

 

まずは、言葉を伸ばして、連続で言葉が出ないようにする(これが伸発)

 

それでも、周りに話し方を指摘されたりすると、どもるのが嫌だ、吃音を否定するようになり

 

連発も伸発も出さないようにして、言葉が数秒間出てこない、難発になるんです。


さらに苦しくなると、手を動かしたり、足踏みを踏んだり、体を動かして言葉を話す、随伴症状になります。


それでもダメだと、言い換えをしてしまう。

 

このように、どもること=ダメなことという認識を周りの環境から作られ、自分の吃音を否定して、隠すために、どもらないようにするために色々工夫する中で、どんどん悪化していきます。

 

確かに、成人までに8割は改善しますが、2割は

成人になっても改善しません。

 

小児のうちに5%が吃音を発症する、つまり

100人に5人が吃音を持っている子供なのに

学校では具体的な対策がとられないまま、放置されているんです。

 

 

 

間違いだらけの吃音理解②

「吃音はどもりがひどい人が

一番悪化している」

 

すごい言葉を連続して話していると、一見、

すごく苦しそう、大変そうに思えて、それが吃音で一番悪化している状態だと思う人が多いと思います。

 

しかし実は、一番悪化しているのは一見、吃音に見えない、言葉が詰まって言葉が出てこなくなる難発という状態なんです。


どもっているように見えないけど、言いたい言葉がいえなくて言い換えをする、もどかしさ

悔しさ、見えない苦しさが難発にはあります。

 

ここはラジオではなく、個人の経験ですが、

実際に吃音での悩みが強い方の多くはこの

難発で苦しんでいる人が多いと感じています。

 

逆に、「あ、あ、あ」と言葉を連続して出す、連発、これは吃音者にとって一番楽な話し方で、自然な話し方なんです。

 

実際、吃音の進展段階という吃音の悪化の段階を表にしたものがあるのですが、一番軽い状態は、言葉が連続して出るが、それをその人自身が気にしていない状態なんです。

 

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なので、言葉を連続して出しても、

叱ったり、怒らないでください。

 

なんで、普通に話せないのとか

言わないで下さい。


連発を出さまいと工夫したことで、

どんどん話しにくくなっていることに

吃音者自身も気付けないんです。


だからこそ周りの人が、連発を自然な話し方として自然に聞いてくれる環境が必要なんです。

 

 

 

間違いだらけの吃音理解③

「吃音の話をすると

吃音が悪化する」

 

吃音の話をして、吃音を意識させたりすると

悪化するから、吃音という事は子供に言わないで欲しいと餅田先生は親に言われたそうです。

 

吃音は傷口なのでしょうか?

 

吃音の悪化は吃音を意識することではなく、

吃音を否定して、今の話し方は変だ、隠さないと、工夫してなんとかどもってないように見せないと、という吃音の否定から悪化します。

 

どもってもいいんだよと本人も周りも、今の話し方を認めてくれる環境を作るのが大事なんです。

 

そうなると、悪化して、大人になったら苦労するんじゃないかと思うかもしれませんが、吃音が悪化するのは吃音を否定し、吃音を隠そうと工夫するから悪化するんです。

 

 

しかし、吃音の理解の教育について学校側に話すと

・まだ早すぎる

・何かが起こってから対応すればいい

・今それをする意味はあるのか

・その話をしたら、いじめられるんじゃないか

→学校側がすぐに対応してくれないという

課題があります。


多くの学校では様子見をしよう。

→その間に、クラスの人に真似されたり、

話し方を指摘されたりしてしまい、難発になり、吃音の症状が悪化してしまう可能性がある…

 

100人に5人もいるのに、なぜ学校でそういう教育がないのか。

 

小さい頃の方が吃音に対しての先入観がないので、理解してくれる。吃音の教育に早すぎるということはないんです。

 

保育の現場でも吃音のことを学ぶ機会は

ほとんどありません。今は吃音を学ぶ研修会を

定期的にやっている保育園もあります。

 

 

3.吃音の正しい理解の啓発が

一人の吃音の子供を救った話

 

餅田先生が学校で吃音の授業を行いました。

吃音の話し方や、吃音の原因や理由などの

話をしました。


まず、なんで「あああ」ってなるのか考えてみようと、クラス、皆で考えてもらいました。

 

そこで、クラスのチームごとに発表があり、その後、餅田先生は吃音の正しい知識を伝えました。

 

「あああ」ってなるのは慌てているからでも、ふざけているからでもない、なぜ、そうなるのかは分かっていないんだよ。研究段階なんです。

 


吃音のある人の話し方をそのまま受け入れること、それがすごく大事。気づかずに吃音のある人を傷つけないようになって欲しい。

 

最後にクラスの吃音の子供に、吃音でどんなことが辛かったのか、吃音になって何が大変だったのかという話がありました。そこで、話を聞くときに、自分だったらどうしてあげられたのかということを考えながら聞いて下さいと

言われました。

 


授業が終わり、一人のクラスメイトの感想の一部には次のようにありました。

 

喋り方を否定されて、笑われるのは嫌だと

思った。同じ気持ちになってあげられなくて申し訳ないと思った。

 

授業をした結果、クラスの吃音の子供を馬鹿にしていた子供も、吃音のことが理解できて良かったと話し、今では馬鹿にしなくなりました。

 


吃音の子供は迷惑行為はしません。だから、学校での対策は後回しにされがち。でも、そんなものではいけないんです。

 


今では餅田先生が学校の先生に吃音の研修を

3年ぐらいしているそうです。

 

 

研修会に参加した学校の先生の感想

知らないことの怖さを知りました。

周りがどう関わるか、どう伝えるかで

その子供の人生が変わると思うと

もっと学びたいと思いました。

 

 

AEDの操作を知るだけで助けられる命があるように、吃音のことを知ることで助けられる心があるということを知りました。

 


流暢性障害学会

理事長


早期発見、早期療育。

その子に合う対応をしていくのが大事。普通の子にしようとするのは違う。子供は一人で変われない。

 


吃音は治さなければならないのか。

どもる話し方は、普通に聞いてもらえればいいんじゃないか。大多数と違う話だからおかしいというのは違うんじゃないか。

 

 

4.考察

自分はVRで吃音を改善するというスタンスなので、正直、吃音啓発は改善よりは重要視していなかったこともありました。

 

しかし、今回の話を知ることで、自分も勘違いしていましたが、連発が自然な状態で、吃音者にとって一番楽な状態。

 

それを否定して、どもりを隠すために自分で色々工夫することが、かえって悪化に繋がり、どんどん話しにくくなっていた、これを小さい頃に知っていただけで、成人になってから苦しまなくて済んだのかもしれないと思いました。

 

さらに、吃音の正しい理解が一人の吃音の子供のいじめを無くしたり、吃音啓発は、吃音改善にも繋がるのではないか。

 

どもることを否定する、その姿勢が悪化に繋がるという話は認知行動療法でもありますし、色々勉強していく中で、何が本質的なのかというのは少しずつ見えてきた気がします。

 

VRを通じて、吃音者自身も、吃音でない人も

吃音のある話し方を否定したり、指摘したり、

どもる話し方を受け入れてくれる社会を作ることで、吃音の症状が悪化する人が減り、いじめが無くなる、そんなことにこれから貢献していけたらいいなとそう思いました。

 

 

【吃音症状の軽減が吃音改善に繋がった経験談】自分の吃音改善のプロセス

どうも。

Markです。

久々にブログを更新しました。

 

今回は、Twitterで自分が吃音を改善できたまでの感覚を教えてほしいと連絡をくれた方がいたので、自分がどのような過程で、少しずつ吃音を改善したと言えるレベルまで吃音の悩みが減っていったのかをご紹介したい思います。

 

個人的な感覚だと、心理的な課題感で吃音で困っている人や連発が基本で、難発はあっても長くて5秒ぐらいの人には向いているのかなと思ってます。

 

あくまで個人の感覚なので、参考になれば嬉しいです。

 

小中高

 

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小中はいじめにあい、人の笑い声が馬鹿にしているような幻聴が聞こえたり、人の目を見るのが怖くて、涙が出るぐらい、社交不安のような症状が強かった。人と話す時もいじめられていたので、話すだけで馬鹿にされる、否定されるという感情が強くなり、言葉をほとんど発さなくなった。そのせいで、前を向いて歩くことができず、人の目や声が聞こえないように下を向いて歩いていた。

 

 

 

最初はどもったら馬鹿にされるとか、どもったら嫌だという感情が強かった。少しでも、どもったり、言葉が詰まると、顔が赤くなり、

動悸が早くなり、早く話そう、早く話そうと

どんどん焦ってしまう。だから、高校でも、お疲れとか、おはようとか詰まるから、言わなかったし、複数人で話す時も話のペースについていけないので、話すことから回避していた。

 

 

 

大学生

それでも、大学生になってからは自分を少しでも変えたい!と思い、人と話す場面を避けずにどもったり、言葉が詰まる場面に参加し続けた。

 

 

 

どもりに対する否定感が減ったのは、どもっても、言葉が詰まっても人に自分の想いや伝えたいことは伝わるという実感を営業の仕事で感じられたこと。

 

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営業は学生団体で武道館でソーシャルビジネスコンテストを開催して、8000人集まるというものだった。そのビジコンのチケット営業で、言葉が詰まっても、話すのがゆっくりでも、どもっても、自分の思いは伝わるし、相手に理解してもらえるという経験を積んだ。

学生同士だったので、失敗してもそこまで怒られるとか、ダメージが少なかったから、場数をこなせたのかなと今では思う。

 

 

 

それからは自分のどもりを俯瞰してみられるようになった。どもったらダメだとどもりを否定していた時は、どもったらとにかく恥ずかしいし、周りにも迷惑かけているし、やばい!早く言わないと!という感情でパニックになっていた。

 

 

 

でも、どもっても、言葉が詰まっても、人に言葉は伝わるし、相手にそこまで気を使う必要もない、そう思えてからは、どもる自分を俯瞰的に見られるようになり、どういう時にどもるのかパターンがわかるようになった。

 

 

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あと、人は他人のことなんて気にしていない、気にしているのは自分だみたいなことをアドラーの嫌われる勇気を読んだり、色々な本、特に心理学系の本を読んでいく中でもどもりや言葉の詰まりで、急いで話そうとか思わなくなり、焦りが無くなった。

 

 

 

卑屈なぐらいに謙虚だったからこそ、自分のペースで話す、相手がいくら待とうが関係ない、それを意識してから楽になった。

 

 

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それからは色んなベンチャーインターンをして、ライターや広報、マーケティングなど

話すことがあまり必要とされない仕事で経験を積み、結果を出していった。話すこと以外で結果を残し、自信がついてきたので、ずっと逃げていた接客に挑戦。

 

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めちゃくちゃ忙しい接客のバイトで、どもることや言葉が詰まることを気にしていられない、とにかく数をこなすという場面で、苦手な言葉をどもりながらも、言葉がつまりながらも1日に何度も話し続けた。

 

 

 

6ヶ月ほど経ってから、レジに立った瞬間に一切思考をせずとも、流れるように言葉が出てきた。その時の成功体験から一気にどもりも言葉が詰まることも減った。この接客のバイトはカフェレストランで教育が行き届いていたため、一回も馬鹿にされることもなく、大丈夫だよと

ゆっくり話しても、詰まっても、受け入れてもらえる環境だったのも大きかった。

 

 

 

また、吃音者の多くはどもったり、詰まって、周りに迷惑が少しでもかかると、自分は邪魔だと思われている、迷惑をすごくかけていると自己肯定感が下がったしまうが、

 

 

 

このアルバイトは皿を少し運んだりしただけで、さすが!助かる、ありがとう!と少しの行動で感謝してもらえたり、皆が入れない時間にシフトを出すだけで本当にありがとう、君がいて良かった!助かったよ!と感謝をしてもらえたので、役に立っているという感覚を感じられたのも大きかった。

 

 

 

まとめ

 

まとめると、自分の場合は吃音を否定してしまう心理的な課題感が減ったことで、どもる場面、言葉が詰まる場面でパニックにならず、客観的に自分のどもりを捉えられるようになった。

 

それからはめちゃくちゃ謙虚で、卑屈なぐらいだったので、自分のペースで、相手を待たせてもいい、少し自己中なぐらいな考え方ができたことで、早く話そう、早く伝えようと思うことが無くなった。詰まっても、どもっても、

焦ることが無くなり、自分のペースで話すようになった。

 

アドラー心理学の本の中で、誰も他人に興味がない。気にしているのは自分だけみたいな文章で、それを経験から実感できたことも大きかった。

 

そこからどもることではなく、別のことに意識を向けざるを得ない環境に身を置くことで、どもりと言葉が詰まるのが減ったという接客でこ成功体験から、その後も吃音が改善した。

 

今も少しどもったり、詰まることはありますが、楽にどもれるようになり、吃音では何も悩んでいないです。

 

一回もどもったらダメだ、一回も詰まったらダメだ。その考えを捨てることができると気持ちは楽になるんじゃないかなと思いました。

 

治療ではなく、軽減を目指す、その結果、改善していくこともあると思うので、何か参考になれざば嬉しいです。

 

 

 

最後に今回の経験での学びをまとめてみました。

 

 

 

【自分の経験から大事だなと思うこと】

◽︎どもることを避けない。場数をこなすことで

慣れてくる。

◽︎人に待ってもらってでも、自分のペースで話すことを貫く。吃音者は良い人が多い分、謙虚な人が多いので、少し自己中な方がちょうどいい。(これは自分的にはすごく大事だと思う)

◽︎言葉が詰まりそうだなと思ったら、無理に話そうとしない。(難発で無理に話すとすごく疲れますし、個人の経験では難発が強い時は話すのをやめていました。自分が続けられる、できることをやればいいと思います)

 

◽︎どもったこと、言葉が詰まったことを意識しない。それよりも、自分の伝えたいこと、言いたいことを相手に伝えられたかを大事にする。

◽︎心理系の本を読むだけではなく、学んだことを苦手な場面やどもる場面で実行する。

マインドを変えるだけでは意味がないけど、考え方をインプットし、それを実践することで、本当の理解になる。人に言われる言葉より、自分の経験から実感することが一番大事。オススメは「嫌われる勇気」

◽︎吃音者は普通の人のように自由に話せない

。だからこそ、話すこと以外で結果を残す。

 

自分にできること、自分の可能性を決めつけない、色んなことに挑戦する中で、結果を残せれば自信もつく。その自信がさらに前に進む原動力となる。

 

 

 

あと、自分はどーもわーくやVRの活動で50人以上の吃音者の方と向き合ってきたり、関東の吃音のコミュニティには色々参加してきたので、悩み相談でも吃音に関して聞きたいことでも何かあればお気軽にご連絡ください!

 

自分自身、うぃーすたとか言友会に参加したかったけど、参加していいのか分からず、ハードルが高いなと感じていたので、そういった方のお手伝いもできればと思っております。

 

 

 

また、今回は個人の体験談なので、これで全ての人が改善するかは分からないので、そんな人もいるんだなと参考程度に考えてもらえればと思います。

 

今後はより再現性のあるエビデンスベースな吃音への心理的なアプローチや社交不安障害を改善する研究なども勉強はしていますので、そういったお話や内容。または、海外の最先端の研究内容もこのブログでご紹介していきたいと思います。

 

 

ご質問やご相談などあればこちらからどうぞ!

Twitter

@MarkRifu

 

 

 

 

 

吃音VRを開発した理由

どうも!

DomoLensの梅津です。

 

 

 

「なんで吃音にVR?」

「ただ、VRを掛け合わせれば目立つから、

吃音VRって言いたいだけなんじゃないの?」

VRってゲームじゃないの?」

 

 

 

そう思う人は多いかもしれません。なので、今回はなぜ自分が吃音VRを開発したのか、その理由と背景についてお伝えできればと思います。

 

 

 

1.学校でのいじめ

2.人生が変わった出会い

3.大学時代での吃音の苦しみ

4.第2の人生の転換期

 

 

 

1.学校でのいじめ

まずは、自分の背景から説明させてください。

私自身、小さい頃から吃音がありました。

それでも、小学4年生までは、活発な少年で、森を元気に走り回り、いつも笑顔でクラスの人気者でした。

 

 

 

しかし、小学5年の頃にいじめにあい、無表情で、一言も喋らない人間になりました。一言話すだけで、心無い言葉を言われ、存在を否定され、心臓にぐさっとナイフを刺されたような気持ちで、言葉を話すのが怖くなりました。

 

 

 

それからは、女性によく心無い言葉を言われたことで、女性恐怖症になり、自分の存在意義がわからなくなりました。

 

 

 

誰にも認められない、誰にも必要とされない、そんな中で、人の笑い声がいつも自分を否定しているように聞こえ、人の目が自分の存在を否定しているように見えて、前を見て歩くことができず、いつも下を見て、人の声や目を見ないように生きていました。

 

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人の目や笑い声を聞くだけで、涙が出る、それぐらい精神的に疲弊していました。

 

 

 

誰にも理解されず、誰にも必要とされず、自分の存在を毎日のように否定され、生きるのがつらくて、車に轢かれて、命を断とうとしたことさえあります。

 

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そのいじめは中学まで続きました。そんな中、

ある転機が訪れました。

 

 

 

2.人生が変わったきっかけ

それはテニスです。テニスに出会ったことで

私の人生が変わりました。

 

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「死にたい」「面倒くさい」

が口癖だった人間が

 

 

 

「頑張りたい!」

「もっと挑戦したい!」

そんな全くの別人になれたのです。

 

 

 

それからは、勉強もスポーツも頑張り、自己肯定感と挑戦する意欲を身につけることができました!

 

 

この経験から、人はたった一つのきっかけで人生を変えられる。

 

その想いから、誰もが成功体験を積むことができ、人生を変える一歩を踏み出せるような支援がしたい。

 

 

 

人の可能性を創りたい、その中でも自分と同じような苦しみを抱えている吃音者の可能性を創れるようなことがしたい、そう思うようになりました。

 

 

 

3.大学時代での吃音の苦しみ

それから、その挑戦意欲とモチベーション、行動力で、大学以外にも学生団体やIT企業でのインターンなど様々な活動に挑戦しました。

 

 

それでも、吃音は治らず、言葉を話す仕事では失敗が多く、インターンでもライターなど話さない仕事をメインにやっていました。普通の飲食のアルバイトに挑戦しましたが、面接で落とされ、受かった先では、吃音が理解されず、かなりしんどい経験をしました。

 

 

 

その中でも特にしんどかったのが、焼肉屋でのアルバイトです。すごく恰幅が良く、図体のでかい、40歳ぐらいの方が上司だったのですが、

どもって話をしただけで、ふざけて話していると思われ、

 

 

 

「馬鹿にしてるのか!」

 

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と怒鳴られたんです。

 

 

 

あまりにも不条理な理由で怒られ、怒りと悲しみがこみ上げましたが、何も言えない情けなさや理解してもらえない虚しさを感じ、精神的にかなりダメージを受けました。

 

 

 

その後、病院にも通いましたが、自分は緊張や不安を感じ、どもったらヤバイ!という対人場面で吃音が出たので、病院に通っても、吃音が出ず、あまり効果を感じられませんでした。

 

 

 

病院に来たら音読をさせられ、軟起声の練習など、音読では全くどもらず、あまり効果を感じませんでした。勉強した今だと、これは心理的な側面に問題があり、連発がメインの人ではなく、難発が強く、20秒とか30秒とかどんな場面でも声が止まって出てこない人向けのアプローチだったと思います。つまり、自分の吃音の症状に関してはあまり効果的ではないアプローチでした。

 

 

 

4.第2の人生の転換期

そんな中、様々な経験を重ねる中で、いよいよ避け続けた接客に挑戦しようと大学4年の5月に

カフェレストランに挑戦しました。

 

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このレストランは、教育がしっかりしていて、

どんなにどもっても、笑顔で明るく

「大丈夫だよ」と言ってくれる人が多く、

 

 

 

自分はここにいても邪魔なんじゃないか、そう思うことは吃音者では多いんじゃないかなと思いますが、少し、皿を運んだだけで、笑顔で

「ありがとう!」と感謝を口にする教育があり、

 

 

 

シフトに多く入るだけで、「○○君がいたおかげで本当に助かったよ!いつもありがとう!」と自分の存在意義や、役に立っている実感を感じられたのです。

 

 

 

そんな、自分の吃音が出やすい注文をとる場面で失敗が許され、自分のペースで何度でも練習できる、そんな経験から

 

 

 

最初は百円を言うだけでも、「ひゃ、ひゃ」とどもっていたり、「あ、あ、あ」とありがとうございます、いらっしゃいませが言えなかったのですが、

 

 

 

吃音を改善することができ、普通に話すことができるようになりました。

 

 

そこで、自分の経験を基に吃音者の課題解決がしたい、そこで体験に価値があるVRというものがあることを知り、吃音にも使えるのではないかと閃きました!

 

 

 

さらに、色んな人に想いを伝えたら、吃音の研究者の知り合いから、吃音の改善にVRが使われている論文に出会いました。

 

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そこから、ネットで調べたら、吃音だけではなく、脳に問題がある鬱や自閉症統合失調症など、様々な精神疾患発達障害の改善に海外の研究では使われていることを知りました。そこに吃音の文字もあり、雷に打たれたような衝撃を受けました。

 

 

 

原因不明で、確固たる治療法のない吃音は脳に問題があることだけは分かっています。これだけ脳に問題がある障害の改善に使われているなら、VRが吃音の本質的な課題解決になるんじゃないか、そう確信し、2年前にVRに人生をかけることを決意しました。

 

 


だからこそ、このVRを同じ苦しみを持つ人に届けて、その人が吃音で自分の夢ややりたいことを諦めてしまうのではなく、吃音があっても、

挑戦できる!頑張れる!

 

そう思えるような自信や自己効力感を身につけられることで、最初の一歩を踏み出し、自分の中で障害があったことで、こんなことができた!こんなことに挑戦して、こんな仕事に出会えた!

 

 

 

そういった過程で、障害をマイナスなものではなく、少しでもプラスのものと自分の中で捉えられるようになったらいいなと思います。

 

 

 

そして、その仕事やその人がやったことが社会に還元され、社会にとっても価値となるような、「個人にとっても、社会にとっても障害が価値になる」そんな社会を、未来を実現するために、このVRの開発と研究をしています。

 

 

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。吃音の痛みや苦しみを知り、人の痛みを理解できる人間になり、結果的に吃音を改善と言える状態にまでできたからこそ、

 

 

 

吃音者の課題を解決する、これは人生をかけてやり遂げたいですし、自分の使命だと思っています。

 

 

 

今、吃音で苦しんでいる人、自分の存在意義を見失いかけていて、誰にも理解されず、孤独で苦しんでいる人、努力が認められず、悔しさを感じている人、人の弱さに誰よりも徹底的に向き合い、弱さを抱えた全ての人が自分の可能性を信じられる、そんな社会を創ります。