アメリカの大学でVRが吃音臨床に活用できることが明らかに
アメリカのジョージワシントン大学で2015年に
発表された論文によると、吃音者に実際の観衆の前でスピーチと、VR空間で観衆の前でのスピーチを行った。
その時に、喋る時の自信度や不安度を数値化した研究が行われた結果、ほとんど数値の差が無かったことから、VRで実際と同じようなスピーチにおける不安感を与えられるということが分かった。
以下の図では、コミュニケーションに対する不安を示す数値(PRCA-24)は、実際の観客の前では80.1に対して、VR空間での仮想の観客の前では79.4となっている。
また、 話すことへの自信に関する数値(PRCS)は、実際の観客の前では12.7に対して、VR空間の仮想の観客の前では14.4となっている。
また、VRのシチュエーションを2つのパターンに変化させることで、吃音の頻度をコントロールできることがわかった。
1つは時間制限を設けること
もう一つは自分より権威の高い人に変えること
この2つのパターンにシチュエーションを変化させることで、吃音の頻度が増したことから、VRによって吃音をコントロールできることが分かり、吃音の臨床への応用可能性があるということが明らかになった。
論文の中では、以下のようにこの研究の可能性が説明されている。
VRで吃音を操作することが可能であり、治療相互作用の増強として使用する可能性があると示唆されている。
また、VR空間で話す環境が実際と同じような吃音者の情動的、行動的および認知反応を引き起こすことも示唆されている。
したがって、VRによって提供された環境は吃音の評価や治療に役立つ。
【考察】
世界で初めて、吃音とVRに関する研究が行われ、吃音臨床への応用可能性が示唆されたという意味で、今回の研究は非常に意義があると思います。これまで、PTSDや痛みの緩和、不安や恐怖症の改善に対してのVR研究が進んでおり、自閉症に対してもVRが効果的であるという事例から、脳に何かしらの問題がある疾患に対してVRが効果的であるとわかりつつあります。
また、吃音の成人の40%に併発すると言われていている社交不安障害。これに対しては、社交不安障害の患者に対して既存の苦手な場面を何度も経験する暴露療法よりもVRによる暴露療法の方が効果的か、同等の効果がVRにはあるということも300人の被験者に対する大規模な研究データ(メタアナリシス)からわかってきています。
そんな背景から、吃音という狭い領域に対して
アメリカの大学の教授が吃音に対するVRの研究を行い、その可能性を示せたというのは今後の吃音臨床や吃音との向き合い方にも大きな変化を起こすのではないかと感じています。
まずは、自分が日本でVRによる吃音改善という研究領域を切り開いていきます。ご興味のある研究者や言語聴覚士の方や臨床心理士の方、吃音当事者の方がいましたら、下記からご連絡下さい。
MarkRifu
https://m.facebook.com/madoka.umetsu.1
infoadversity@gmail.com
【元の論文】
Real Enough: Using Virtual Public Speaking Environments to Evoke Feelings and Behaviors Targeted in Stuttering Assessment and Treatment
https://ajslp.pubs.asha.org/article.aspx?articleid=2089544