優秀賞を受賞した吃音特集のラジオ番組「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」
どうも、Markです。
吃音がある人がこのブログを読んでいると思うのですが、子供の頃、吃音で辛い思いをしたって人は多いのではないのでしょうか。
自分も小学生の頃から一気にしんどくなりました。だから、治したい、そう思う人は多いと思います。なので、自分もVRの研究をしています。
そういった吃音改善も大事ですが、今回、ご紹介したいのは吃音啓発に関するラジオです。
自分自身、吃音改善の研究をしているので、啓発の活動はあまりできていませんでした。
しかし、今回のラジオの内容を知ってからは吃音啓発の可能性や重要性というのをこれまで以上に感じることができました。
もしかしたら、正しい吃音の理解を促すことは吃音改善にも繋がるのではないか、そう思いました。
そこで、今回は優秀賞を受賞した吃音の正しい理解に関するラジオ番組「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」についてご紹介させていただければと思います。
1.吃音特集で優秀賞を取ったラジオの概要
2.間違いだらけの吃音理解
①吃音は放っておけば治る
②吃音はどもりがひどい人が一番悪化している
③吃音の話をして、吃音を意識させると悪化する
3.吃音の正しい理解の啓発が一人の吃音の子供を救った話
4.考察
今回ご紹介させていただくラジオはSBCラジオスペシャル「あ、あ、あ、あのね 間違いだらけの吃音理解」という長野のラジオ番組が2019年日本民間放送連盟ラジオ教養番組部門で優秀賞を受賞したものになります。
長野県で言語聴覚士をされている餅田亜希子先生が世間で言われている吃音についての知識や理解に関して間違いが多いので、その間違いを修正し、本当に正しい知識を紹介していく番組です。
1.間違いだらけの吃音理解
間違いだらけの吃音理解①
「吃音は放っておけば治る」
ラジオでは、発達障害の専門である医師に吃音について相談したところ、8割が成人までに改善することから、様子見と言われたそうです。
しかし、吃音は放置しているとどんどん悪化していくことがあります。
「あ、あ、あ」と連発で話すことが一番楽な発話なのに、それを否定されることで吃音の症状はどんどん悪化してしまうんです。
それはクラスで子供たちに真似されたり、親切にそういう言い方じゃないよとクラスメイトに指摘されたり、いじめで悪化すると思いがちですが、必ずしも悪意ではなく、話すのが大変そう、苦しそうだから何か力になりたいという善意から指摘されることもあります。
それでも、自分の意志でコントロールはできないので、「か、か、からす」と言って、そうじゃないよ、「からす」だよと指摘されます。
自分の話し方は変なんじゃないか、おかしいんじゃないか、そんな不安から、どもらないように色々工夫をし始めます。
まずは、言葉を伸ばして、連続で言葉が出ないようにする(これが伸発)
それでも、周りに話し方を指摘されたりすると、どもるのが嫌だ、吃音を否定するようになり
連発も伸発も出さないようにして、言葉が数秒間出てこない、難発になるんです。
さらに苦しくなると、手を動かしたり、足踏みを踏んだり、体を動かして言葉を話す、随伴症状になります。
それでもダメだと、言い換えをしてしまう。
このように、どもること=ダメなことという認識を周りの環境から作られ、自分の吃音を否定して、隠すために、どもらないようにするために色々工夫する中で、どんどん悪化していきます。
確かに、成人までに8割は改善しますが、2割は
成人になっても改善しません。
小児のうちに5%が吃音を発症する、つまり
100人に5人が吃音を持っている子供なのに
学校では具体的な対策がとられないまま、放置されているんです。
間違いだらけの吃音理解②
「吃音はどもりがひどい人が
一番悪化している」
すごい言葉を連続して話していると、一見、
すごく苦しそう、大変そうに思えて、それが吃音で一番悪化している状態だと思う人が多いと思います。
しかし実は、一番悪化しているのは一見、吃音に見えない、言葉が詰まって言葉が出てこなくなる難発という状態なんです。
どもっているように見えないけど、言いたい言葉がいえなくて言い換えをする、もどかしさ
悔しさ、見えない苦しさが難発にはあります。
ここはラジオではなく、個人の経験ですが、
実際に吃音での悩みが強い方の多くはこの
難発で苦しんでいる人が多いと感じています。
逆に、「あ、あ、あ」と言葉を連続して出す、連発、これは吃音者にとって一番楽な話し方で、自然な話し方なんです。
実際、吃音の進展段階という吃音の悪化の段階を表にしたものがあるのですが、一番軽い状態は、言葉が連続して出るが、それをその人自身が気にしていない状態なんです。
なので、言葉を連続して出しても、
叱ったり、怒らないでください。
なんで、普通に話せないのとか
言わないで下さい。
連発を出さまいと工夫したことで、
どんどん話しにくくなっていることに
吃音者自身も気付けないんです。
だからこそ周りの人が、連発を自然な話し方として自然に聞いてくれる環境が必要なんです。
間違いだらけの吃音理解③
「吃音の話をすると
吃音が悪化する」
吃音の話をして、吃音を意識させたりすると
悪化するから、吃音という事は子供に言わないで欲しいと餅田先生は親に言われたそうです。
吃音は傷口なのでしょうか?
吃音の悪化は吃音を意識することではなく、
吃音を否定して、今の話し方は変だ、隠さないと、工夫してなんとかどもってないように見せないと、という吃音の否定から悪化します。
どもってもいいんだよと本人も周りも、今の話し方を認めてくれる環境を作るのが大事なんです。
そうなると、悪化して、大人になったら苦労するんじゃないかと思うかもしれませんが、吃音が悪化するのは吃音を否定し、吃音を隠そうと工夫するから悪化するんです。
しかし、吃音の理解の教育について学校側に話すと
・まだ早すぎる
・何かが起こってから対応すればいい
・今それをする意味はあるのか
・その話をしたら、いじめられるんじゃないか
→学校側がすぐに対応してくれないという
課題があります。
多くの学校では様子見をしよう。
→その間に、クラスの人に真似されたり、
話し方を指摘されたりしてしまい、難発になり、吃音の症状が悪化してしまう可能性がある…
100人に5人もいるのに、なぜ学校でそういう教育がないのか。
小さい頃の方が吃音に対しての先入観がないので、理解してくれる。吃音の教育に早すぎるということはないんです。
保育の現場でも吃音のことを学ぶ機会は
ほとんどありません。今は吃音を学ぶ研修会を
定期的にやっている保育園もあります。
3.吃音の正しい理解の啓発が
一人の吃音の子供を救った話
餅田先生が学校で吃音の授業を行いました。
吃音の話し方や、吃音の原因や理由などの
話をしました。
まず、なんで「あああ」ってなるのか考えてみようと、クラス、皆で考えてもらいました。
そこで、クラスのチームごとに発表があり、その後、餅田先生は吃音の正しい知識を伝えました。
「あああ」ってなるのは慌てているからでも、ふざけているからでもない、なぜ、そうなるのかは分かっていないんだよ。研究段階なんです。
吃音のある人の話し方をそのまま受け入れること、それがすごく大事。気づかずに吃音のある人を傷つけないようになって欲しい。
最後にクラスの吃音の子供に、吃音でどんなことが辛かったのか、吃音になって何が大変だったのかという話がありました。そこで、話を聞くときに、自分だったらどうしてあげられたのかということを考えながら聞いて下さいと
言われました。
授業が終わり、一人のクラスメイトの感想の一部には次のようにありました。
喋り方を否定されて、笑われるのは嫌だと
思った。同じ気持ちになってあげられなくて申し訳ないと思った。
授業をした結果、クラスの吃音の子供を馬鹿にしていた子供も、吃音のことが理解できて良かったと話し、今では馬鹿にしなくなりました。
吃音の子供は迷惑行為はしません。だから、学校での対策は後回しにされがち。でも、そんなものではいけないんです。
今では餅田先生が学校の先生に吃音の研修を
3年ぐらいしているそうです。
研修会に参加した学校の先生の感想
知らないことの怖さを知りました。
周りがどう関わるか、どう伝えるかで
その子供の人生が変わると思うと
もっと学びたいと思いました。
AEDの操作を知るだけで助けられる命があるように、吃音のことを知ることで助けられる心があるということを知りました。
流暢性障害学会
理事長
早期発見、早期療育。その子に合う対応をしていくのが大事。普通の子にしようとするのは違う。子供は一人で変われない。
吃音は治さなければならないのか。
どもる話し方は、普通に聞いてもらえればいいんじゃないか。大多数と違う話だからおかしいというのは違うんじゃないか。
4.考察
自分はVRで吃音を改善するというスタンスなので、正直、吃音啓発は改善よりは重要視していなかったこともありました。
しかし、今回の話を知ることで、自分も勘違いしていましたが、連発が自然な状態で、吃音者にとって一番楽な状態。
それを否定して、どもりを隠すために自分で色々工夫することが、かえって悪化に繋がり、どんどん話しにくくなっていた、これを小さい頃に知っていただけで、成人になってから苦しまなくて済んだのかもしれないと思いました。
さらに、吃音の正しい理解が一人の吃音の子供のいじめを無くしたり、吃音啓発は、吃音改善にも繋がるのではないか。
どもることを否定する、その姿勢が悪化に繋がるという話は認知行動療法でもありますし、色々勉強していく中で、何が本質的なのかというのは少しずつ見えてきた気がします。
VRを通じて、吃音者自身も、吃音でない人も
吃音のある話し方を否定したり、指摘したり、
どもる話し方を受け入れてくれる社会を作ることで、吃音の症状が悪化する人が減り、いじめが無くなる、そんなことにこれから貢献していけたらいいなとそう思いました。