吃音VRを開発した理由
どうも!
DomoLensの梅津です。
「なんで吃音にVR?」
「ただ、VRを掛け合わせれば目立つから、
吃音VRって言いたいだけなんじゃないの?」
「VRってゲームじゃないの?」
そう思う人は多いかもしれません。なので、今回はなぜ自分が吃音VRを開発したのか、その理由と背景についてお伝えできればと思います。
1.学校でのいじめ
2.人生が変わった出会い
3.大学時代での吃音の苦しみ
4.第2の人生の転換期
1.学校でのいじめ
まずは、自分の背景から説明させてください。
私自身、小さい頃から吃音がありました。
それでも、小学4年生までは、活発な少年で、森を元気に走り回り、いつも笑顔でクラスの人気者でした。
しかし、小学5年の頃にいじめにあい、無表情で、一言も喋らない人間になりました。一言話すだけで、心無い言葉を言われ、存在を否定され、心臓にぐさっとナイフを刺されたような気持ちで、言葉を話すのが怖くなりました。
それからは、女性によく心無い言葉を言われたことで、女性恐怖症になり、自分の存在意義がわからなくなりました。
誰にも認められない、誰にも必要とされない、そんな中で、人の笑い声がいつも自分を否定しているように聞こえ、人の目が自分の存在を否定しているように見えて、前を見て歩くことができず、いつも下を見て、人の声や目を見ないように生きていました。
人の目や笑い声を聞くだけで、涙が出る、それぐらい精神的に疲弊していました。
誰にも理解されず、誰にも必要とされず、自分の存在を毎日のように否定され、生きるのがつらくて、車に轢かれて、命を断とうとしたことさえあります。
そのいじめは中学まで続きました。そんな中、
ある転機が訪れました。
2.人生が変わったきっかけ
それはテニスです。テニスに出会ったことで
私の人生が変わりました。
「死にたい」「面倒くさい」
が口癖だった人間が
「頑張りたい!」
「もっと挑戦したい!」
そんな全くの別人になれたのです。
それからは、勉強もスポーツも頑張り、自己肯定感と挑戦する意欲を身につけることができました!
この経験から、人はたった一つのきっかけで人生を変えられる。
その想いから、誰もが成功体験を積むことができ、人生を変える一歩を踏み出せるような支援がしたい。
人の可能性を創りたい、その中でも自分と同じような苦しみを抱えている吃音者の可能性を創れるようなことがしたい、そう思うようになりました。
3.大学時代での吃音の苦しみ
それから、その挑戦意欲とモチベーション、行動力で、大学以外にも学生団体やIT企業でのインターンなど様々な活動に挑戦しました。
それでも、吃音は治らず、言葉を話す仕事では失敗が多く、インターンでもライターなど話さない仕事をメインにやっていました。普通の飲食のアルバイトに挑戦しましたが、面接で落とされ、受かった先では、吃音が理解されず、かなりしんどい経験をしました。
その中でも特にしんどかったのが、焼肉屋でのアルバイトです。すごく恰幅が良く、図体のでかい、40歳ぐらいの方が上司だったのですが、
どもって話をしただけで、ふざけて話していると思われ、
「馬鹿にしてるのか!」
と怒鳴られたんです。
あまりにも不条理な理由で怒られ、怒りと悲しみがこみ上げましたが、何も言えない情けなさや理解してもらえない虚しさを感じ、精神的にかなりダメージを受けました。
その後、病院にも通いましたが、自分は緊張や不安を感じ、どもったらヤバイ!という対人場面で吃音が出たので、病院に通っても、吃音が出ず、あまり効果を感じられませんでした。
病院に来たら音読をさせられ、軟起声の練習など、音読では全くどもらず、あまり効果を感じませんでした。勉強した今だと、これは心理的な側面に問題があり、連発がメインの人ではなく、難発が強く、20秒とか30秒とかどんな場面でも声が止まって出てこない人向けのアプローチだったと思います。つまり、自分の吃音の症状に関してはあまり効果的ではないアプローチでした。
4.第2の人生の転換期
そんな中、様々な経験を重ねる中で、いよいよ避け続けた接客に挑戦しようと大学4年の5月に
カフェレストランに挑戦しました。
このレストランは、教育がしっかりしていて、
どんなにどもっても、笑顔で明るく
「大丈夫だよ」と言ってくれる人が多く、
自分はここにいても邪魔なんじゃないか、そう思うことは吃音者では多いんじゃないかなと思いますが、少し、皿を運んだだけで、笑顔で
「ありがとう!」と感謝を口にする教育があり、
シフトに多く入るだけで、「○○君がいたおかげで本当に助かったよ!いつもありがとう!」と自分の存在意義や、役に立っている実感を感じられたのです。
そんな、自分の吃音が出やすい注文をとる場面で、失敗が許され、自分のペースで何度でも練習できる、そんな経験から
最初は百円を言うだけでも、「ひゃ、ひゃ」とどもっていたり、「あ、あ、あ」とありがとうございます、いらっしゃいませが言えなかったのですが、
吃音を改善することができ、普通に話すことができるようになりました。
そこで、自分の経験を基に吃音者の課題解決がしたい、そこで体験に価値があるVRというものがあることを知り、吃音にも使えるのではないかと閃きました!
さらに、色んな人に想いを伝えたら、吃音の研究者の知り合いから、吃音の改善にVRが使われている論文に出会いました。
そこから、ネットで調べたら、吃音だけではなく、脳に問題がある鬱や自閉症、統合失調症など、様々な精神疾患や発達障害の改善に海外の研究では使われていることを知りました。そこに吃音の文字もあり、雷に打たれたような衝撃を受けました。
原因不明で、確固たる治療法のない吃音は脳に問題があることだけは分かっています。これだけ脳に問題がある障害の改善に使われているなら、VRが吃音の本質的な課題解決になるんじゃないか、そう確信し、2年前にVRに人生をかけることを決意しました。
だからこそ、このVRを同じ苦しみを持つ人に届けて、その人が吃音で自分の夢ややりたいことを諦めてしまうのではなく、吃音があっても、
挑戦できる!頑張れる!
そう思えるような自信や自己効力感を身につけられることで、最初の一歩を踏み出し、自分の中で障害があったことで、こんなことができた!こんなことに挑戦して、こんな仕事に出会えた!
そういった過程で、障害をマイナスなものではなく、少しでもプラスのものと自分の中で捉えられるようになったらいいなと思います。
そして、その仕事やその人がやったことが社会に還元され、社会にとっても価値となるような、「個人にとっても、社会にとっても障害が価値になる」そんな社会を、未来を実現するために、このVRの開発と研究をしています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。吃音の痛みや苦しみを知り、人の痛みを理解できる人間になり、結果的に吃音を改善と言える状態にまでできたからこそ、
吃音者の課題を解決する、これは人生をかけてやり遂げたいですし、自分の使命だと思っています。
今、吃音で苦しんでいる人、自分の存在意義を見失いかけていて、誰にも理解されず、孤独で苦しんでいる人、努力が認められず、悔しさを感じている人、人の弱さに誰よりも徹底的に向き合い、弱さを抱えた全ての人が自分の可能性を信じられる、そんな社会を創ります。